AIアナリストレポートはいかに
2026.07.27 (月) 4:17 PM
・AIはバブルか。ブームではあるが、まだバブルとはいえない。2000年頃のITバブルはどうであったか。インターネットの普及が世の中を大きく変えると期待された。その後の20年をみれば、インターネットはどこでも使われるようになり、情報の利活用はとんでもなく便利になった。
・ECは当たり前になり、スマホはなくてはならないものとなった。企業における業務効率は大幅に向上した。米国では、GAFAが巨大企業にのし上がった。しかし、当時さまざまな新興企業がネット関連で登場したが、業績が伴わずに没落していった。新産業の黎明期はいつもそうである。
・AIブームは始まったばかりである。使ってみれば、その良さがすぐわかろう。当然、危うい面を多々有している。利用が先行し、ルールや倫理は後追いとなる。産業ができ上がる頃に制度も整ってくる。制度が整ってくる頃に、次の新しいトレンドに入るというパターンである。
・AIを開発する企業、AIのインフラを支える企業、AIを使って新たな商品・サービスを提供する企業、AI商品・サービスを利用して便利で楽しい生活を過ごすようになる消費者へと、バリューチェーンはつながっている。
・このチェーンにおいて、突然、新興企業が台頭してくる。米国企業が圧倒的に強い。しかし、AIを活用するという点では、日本の中堅企業にも出番が大いにある。AIを活かして、自社の強みを10倍、100倍に強化できれば、他を圧倒して市場を拡大することができる。
・政府もAI戦略本部を立ち上げ、AI基本計画を策定した。国産AIの開発力を強化し、フィジカルAIの活用を加速し、国際競争力の強化に役立てる。鍵はエッジにあると、若林教授(熊本大学)は指摘する。
・AIを使う現場サイド(エッジ)にリアルなデータがある。これを使って、リアルな現場でAIを活用すれば、日本企業が強みとする領域で競争力を高めることができる。
・AIも半導体もDC(データセンター)も、いまや経済安全保障と大きく関わっている。いかに調達するか、いかに利用するか、という両面において、民需と軍需のデュアルユースとなっている。
・サプライチェーンに注意しないと、心臓部を抑えられて、肝心な時に使えないということが起こりうる。セカンドソースはどうするのか。サイバーセキュリティをいかに守るか。戦いの領域は広い。
・地政学リスクへの対応という点で、中国にはどのように対抗するのか。中国はサプライチェーンを抑えにくる。こちらも中国を避けて、外していけばよいというだけでは済まない。
・サプライチェーンに入って、一定の歯止めをかけられるようにしておく必要がある。トランプ流にいえば、何事もディール(取引)である。強力な取引材料は握っておきたい。日本企業の強みを強化して、対抗できるようにしておく政策も重要である。
・ビジネスとして、安くてよいものであれば、経済合理性は働く。しかし、相手が政府の補助金を入れて、有利な取引条件を出してきた時にどうするのか。安全保障のために、コスト的に割高でも利用する必要がある。
・ではどこまで実行すればよいのか。個別企業の限界もある。産業政策としてのサポートは当然ありうる。その合理性を的確に判断できるか。かなり難しい。利害が絡んで、癒着が起きかねない。一定の機密性も要求される。
・これは戦略的戦いである。善意の自由貿易は成り立たない。サプライチェーンを巻き込んだ連携の中で、妥当な均衡点を目指し、その中で自社のポジションを定めるという高等戦術が求められよう。
・このような内容を取り入れたアナリストレポートを、AIは作成することがきるだろか。生成AIはChatGPTが世に出て以降、かつてないスピードで広がっている。MSのCopilot、GoogleのGemini、AnthropicのClaudeなどは誰でも使えるようになっている。
・いくつものAIを並行して使う。日経225採用企業では9割以上がCopilotを導入済みで、複数のAIを使い分けるのが当たり前になりつつある。いかに活用して、役立てるかという競争に入っている。
・生成AIでは、1)知識の検索・活用ができる。2)情報は処理・分析ができる、3)コンテンツの生成ができる、4)アイディアの創出ができる、さらに、5)コードの生成・自動化ができる。6)それを対話しながらインタラクション(相互のやり取り)ができる。
・とすれば、私が書くようなアナリストレポートも、いずれ完成品として仕上がってくるはずである。スタートアップのENVALITH(エンヴァリス)は、AIを活用し、独自のノウハウを取り入れたIRレポートに挑戦している。IRをサポートするウィルズ(グロース上場)は、統合報告書を、AIを活用して素早く仕上げるサービスを開発した。
・上場企業はさまざまなIR活動を行っている。投資家に向けて、情報を発信している。しかし、投資家、株主もさまざまな特性を有する。情報はなかなか思うように伝わらない。逆に、投資家が何を考えているかも十分知ることができない。
・ここに生成AIを活用して、IR活動を変革しようとする活動が活発化している。投資家は今やAI検索で投資先を探してくる。その企業の中身を深く的確に知りたいと思う。企業サイドは、投資家の関心をデータとしてしっかり捉えたい。その上で、効果的なIRを展開したいはずである。
・アナリストレポートには、セルサイドのリサーチレポートや、企業サイドがスポンサーとなるリサーチレポートがある。セルサイドでは、証券会社が、機関投資家である運用会社から注文をもらうことを対価としてレポートを発行する。
・しかし、ビジネスになりそうな大手企業を中心とするので、大半の上場企業はカバーされない。つまり上場企業の3分の2にはセルサイドのアナリストレポートがない。スポンサードレポートは、プロのアナリストにお金を払ってアナリストレポートを書いてもらう。
・そうすると、レポートはできるが、その内容は企業にとって都合のいいことばかりになるのではないか、という懸念が生じる。ここはどう考えるか。どんなレポートにもバイアス(偏見)は生じうるが、それが目立てば、その程度のレポートであるとして、誰も読まなくなろう。
・新聞はどうか。広告を載せてくれる企業について、厳しい記事は書かないだろうか。それが見え見えならば、その新聞は信用されなくなろう。
・違う視点がありうる。投資家が知りたいこと、企業が知ってほしいこと、この双方について、AIが検索し、分析し、コンテンツを自動で生成する。両者の対話を取り入れて、レベルアップを図っていく。フォーマットに従って、レポートが仕上がってくるとする。
・このレポートのできがよければ、使われるようになろう。筆者が3時間かかるところを3分で仕上げてくれるようになろう。筆者が四半期で10社しかできないところを、たぶん1000社は可能になろう。
・しかし、まだこれからである。アナリストはアナリシス(分析)を行う。分析の基本は、比較と予測にある。似たものの比較は容易であるが、異質なものの比較は難しい。過去と現在の分析はできても、将来の予測となると、予測のための変数は多くなり、その重み(ウエイト)も局面によって変わってくる。
・筆者の10年分のレポートを学んで、予測のパターンを十分学習してくれるならば、アナリストと同等の予測力を身に付け、いずれアナリストを上回ってこよう。早晩、そうなる可能性は高い。一流のアナリストにいち早く学ぶことである。この競争も始まっている。AIアナリストの登場、普及、一流化に注目したい。
