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開示で何が変わるか

   2023.03.13 (月) 10:16 AM

・四半期開示は本当に必要か、という議論がなされてきた。アナリストとしては、当然必要である。会社の状況を3か月に1度はきちんと知りたい。年に4回、定期的に対話していと、変化を適切に知ることができる。

・会社によって、局面によって、大きく変化する時もあれば、全く変化がない時もある。変化がないというのも重要な情報である。ある会社は、第4四半期に1年間の利益のほとんどが計上される。1Qから3Qまでは通常赤字である。このような会社の四半期開示は、季節性からみて必要ないともいえる。

・あるいは、大型取引がいつ実行されるかによって、1Qから4Qまでのどこかで業績が大きく出て、あとは少ないという会社もある。こういう会社の前年同期比はさほど意味を持たない。

・ところが、株式市場では、短期業績の変動を表面的に追いかけて、プログラム売買する投資家がいるので、四半期ごとの赤字や前年同期比の増減率が株価変動に影響する。

・そんな短期的な変動は気にしなくてよい。もっと中長期に力を入れよといっても、日々の変動は誰でも気になる。短期指向が助長されかねない。

・情報は効率的にマーケットに織り込まれるというが、必ずしもそうではない。会社が情報を発信してもなかなか投資家に届かないことも多い。株主に四半期に1回、現状を知らせるという意味で四半期開示には意味がある。

・今回は金商法上の四半期報告が1Qと3Qについては、廃止されて、四半期決算短信に一本化される。通常の投資家にとって、特に弊害はないとみられる。

・では、昔のように半期に1回の開示にしたらどうであろうか。当時を振り返ると、それでもさほど支障はなかった。なぜか。会社にインタビューしていれば、直近の状況が概ね把握できていたからである。まめにインタビューしているアナリストに情報は集積され、分析に活かすことができた。

・これが、フェアディスクロージャーが強化され、事業活動がグローバル化してくると、半期ではサプライズが大きくなる。それを避けるという意味で、四半期開示は継続された方がよい。

・有価証券報告書(有報)はどうか。投資家は本当に読んでいるのか。これに対しては、同じフォーマットで、ルールに基づく情報が記載されていることは、絶対に必要であり、投資家は必要に応じて読んでいる。

・必要な時に、いつでも参照できるというメリットは極めて大きい。筆者の場合は、1Qの面談の時に、前期の有報を詳細に読み込んで、そこで疑問に思ったことを詳しく議論している。

・次回の有報が出される6月から非財務情報の充実が図られる。1)サステナビリティ情報の記載が新設される。ここでは、①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標と目標の開示が求められる。ガバナンスとリスク管理は必須、戦略と「指標と目標」は重要性の判断次第である。

・2)人的資本では、人材育成の方針や社内環境整備の方針が追加される。3)多様性では、男女間の賃金格差、女性管理職比率、男性育児休業取得率が追加される。

・コーポレートガバナンスでは、取締役会の機能発揮として、取締役会、指名委員会、報酬委員会の活動状況の記載が追加される。

・こうした開示が企業の価値向上にどれだけ意味を持つか。投資家にとって、投資判断上の有意な情報となるか。これらの情報をベースに、企業との対話で、企業の実態が把握できれば具体的に活用されそうである。

・コーポレートガバナンスをよくすると、企業の成長力が高まるのか。サステナビリティを充実すると、企業の価値はより高まるのか。これは、経路をよくみていく必要がある。漠然と関係がありそうだ、というだけでは企業も投資家も本気にならない。

・よい社長を選ぶ仕組みがしっかりしているか。リスクテイクに戦略上の合理性は本当にあるのか。社外取締役にもっと資本市場が分かった人材を入れるべきである。こういう点をよくみていきたい。

・サステナビリティを支える仕組みがESGである。SDGsの社会的価値に貢献することがその企業のパーパスに結び付く。では、それでもっと稼げるようになるのか。人的資本を充実したら、中長期的にもっと稼げるようになるはずであるが、その蓋然性(確からしさ)を納得させるのは容易でない。

・社会の価値と企業の価値を同期化するところにSX(サステナビリティ トランスフォーメーション)の本質があるといわれる。では、どうやって実践するのか。その方策が、伊藤レポート3.0と価値協創ガイダンス2.0で議論されている。

・カギは、いろいろ言われるから嫌々対応するのではなく。しっかり対応して価値創造になるところまで、徹底的に追求することであろう。中長期の価値を創っていく仕組み(ビジネスモデル)創りこそ、経営者にとっての醍醐味、それに情熱をもって取り組むには、社員はもちろん、まわりのステークホールダーも巻き込んでいく必要がある。

・それをワクワクする気持ちで励んでいる会社はみていると、こちらも楽しくなる。何よりも大事なことは、いくつかのものまねから始めても、自社の強みを活かしていくと、次第にわが社独自のストーリーになってくることである。こうなれば、しめたものである。

・このストーリーがインパクトを持つ。投資家が、投資したくなる根幹はここにある。「開示で会社は変わる」、これを実践する会社に注目したい。

 

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