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価格戦略に付加価値はついてくるか

   2022.09.19 (月) 12:09 PM

・長くデフレが続いたので、日本の感覚は他の先進国とずれてしまった。物価が安定していることはいいことだという反面、経済が停滞して賃金が上がらないこともしかたがないと受け入れてきたようにもみえる。

・ポストコロナのペントアップディマンド(溜まっていた需要)の動きに、ウクライナ紛争によるサプライチェーンの混乱が加わって、資源エネルギー価格が高騰している。通常の需給タイト化というよりも、手に入らないかもしれないというショーテージによる急騰が甚大な影響を与えている。

・商品やサービスの価格は需給によって決まる。でも、何が公正な価格かは意外に分かりにくい。①過去のトレンドをみる、②他社の類似商品と比べる、③海外のマーケットの動きと比較することで、何らかのヒントは得られよう。

・別の方法として、コストの積み上げで、そのインパクトを知ることである。①原料価格が何%上がった、②エネルギーコストが何%影響している、③人件費を上げないといい人材がとれないので、賃金を見直してパートも含めて何%上げる、という動きである。

・サントリー食品インターナショナルの地域別の動きをみていると、値上げについて、日本だけが別枠で考える必要がありそうだ。米国でも欧州でも、原料高に対しては一定の値上げを行っている。通常の経営戦略であるが、日本では値上げを受け入れるカルチャーが違うらしい。それでもマネジメントは価格の見直しを進めていく。

・B to Bのビジネスの世界でも、同一業界で3つのパターンがある。原料高に円安も加わって、日本の価格戦略をどのように展開するのか。海外生産を本格的に展開している企業は、海外ではいち早く価格を上げていく戦略を打っており、日本でも値上げの方向を探っている。

・日本のみで生産して、日本向けが中心の企業では、輸出については円建て価格を上げることができそうだが、それだけでは原材料高が吸収できない。国内価格も上げたいところだが、他社の動きをみている。

・成長分野がグローバルに伸びている企業では、輸出比率が圧倒的に高いので、円安メリットが大幅に利益に貢献している。この効果で、国内生産における原材料高は十分吸収できてしまう。この会社は国内で値上げを行うつもりはない。

・競合の状況をみながら価格戦略を打っていくのは当然であるが、このケースの場合、それぞれが強みを持ち独自性を競っているが、共通の競合商品については、価格戦略に差が出てこよう。

・A社はグローバルに値上げをして、日本も上げる方向にある。B社は、値上げをしたいが、競合が動かない場合不利になるので、負担を我慢するしかない。C社は、円安メリットで十分おつりがくるので、値上げをするつもりはなく、場合によっては、一部値下げで攻勢にでてくるかもしれない。

・ここからが難しいところである。円安メリットはいずれ円高デメリットになることも想定される。グローバルな原材料高については、それをどう価格に反映させていくか。経営の原則を固めて、それを取引先と交渉し、ルール化しておかないと、カルチャーにはならない。

・70年代のオイルショック、80年代の円高ショックを日本企業は乗り越えてきたが、その間、産業・企業の競争力は大きく変動した。90年代以降日本全体はデフレ経済となり、生産性が上がらず、賃金も伸びない国となってしまった。先進国としての国力は、低下の一途をたどっている。

・ここからどうするのか。ウクライナ紛争は長期化しそうである。ロシア、中国とは一線を画した付き合い方をしていく必要がある。予想しえない地政学的リスクへポートフォリオの組み換えを準備しておくことが求められる。米国はリセッションになることも予想されるが、その後の回復を視野に入れて手を打っていくことが重要であろう。

・日本のエネルギー不足は当面厳しくなる可能性がある。効率的な石炭火力や原子力発電の稼働再開を含めて乗り切っていくことになろう。将来のエネルギーミックスについては、改めて長期投資を行っていくべきであろう。

・株式市場はもう一段の調整がありうる。株価水準は、金利と為替と業績で決まる。米国の利上げがインフレを抑え、景気がリセッションに陥らずにうまくオペレーションされればよいが、うまくいかないことを想定した方がよい。利上げがインフレ抑制に効いてくるには時間を要するので、マイルドリセッションに入る公算はある。

・日本の円安は日銀の金融政策に依存するが、国内の物価がスタグレーション的になれば、ますます身動きがとれなくなる。来春の日銀総裁の交代に向けて、1ドル130円を切ってくるならば、一定に落ち着きを取り戻そう。一段の円安は国内消費にはマイナスとなるが、輸出企業と海外からの投資や外人旅行客にはプラスに働こう。

・企業業績は、野村證券金融経済研究所の予測によれば、今期、来期と増益が続きそうだが、まだ不確定要素も多い。日経平均の見方もボックス相場とみており、もう一段の下押しがありそうである。

・円安メリットを享受できるか。原材料高を製品・サービスに適切に転嫁できるか。サプライチェーンの混乱をビジネスチャンスとして乗り越えられるか。こうした点で格差が生まれている。中長期的には、新たなエネルギー投資、メタバースも含むDX投資がリード役になろう。価格戦略で高付加価値化を推進できる企業に注目したい。

 

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