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メガトレンドを疑い、違いを生み出す経営者とは

   2023.03.27 (月) 12:29 PM

・ウクライナ紛争でエネルギー不足が懸念された。サウジアラムコのアミン・ナセルCEOはどうみていたか。今般のエネルギー不足は、ロシア・ウクライナ問題以前から、課題を内包していた。

・石油、原子力から代替エネルギーに一気にシフトしようとした。十分な移行計画が練られていなかった。代替エネルギーでいけると思ったのが早計であったと指摘する。

・石油依存を減らすという政策が実行されたので、当然石油関連への投資が抑制された。投資不足の中、ウクライナ問題で増産を求められても急には対応できない。上流工程への投資は世界で半減していた。すでに投資は拡大に入っているが、対応には数年を要する。

・これからの投資は、カーボンニュートラルと両立させていく必要がある。ただ、その移行期については、現実的な視野で手を打つ必要がある。

・アラムコでは、原油生産を1200万B/Dから1500万B/Dへ能力アップを図るが、さらに+100万B、ガスの生産も+30%を目指す。CO2の回収、貯蔵にも力を入れる。ブルー水素も引き取りの契約をベースに生産を目指す。

・アンモニアと水素の生産拡大を図る。ブルー水素は250 /Bで長期契約してくれるなら対応するという。グリーン水素は400 /Bレベルが求められる。量産プラントを作るには、15~20年はかかる。

・ケミカルの成長は、あと10年続くとみている。400万B/Dは化学品に転換して付加価値を高める。アラムコの社員の平均年齢は35歳、女性も増えている。世界最大のエネルギー企業として、信頼できる顧客を大事にして、安全な文化を創っていくと語った。

・ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマンCEO(会長)は、グローバル化に制約が入り、経済社会のデカップリングが加速するとみている。

・エネルギー危機は、移行計画を十分持たずに、グリーン化を進めた結果、ウクライナ紛争でバランスが一気に崩れた。インフレとの戦いは、過去15年で初めてのことであり、ドラスティックな変化が起きている。一方で、イノベーションも生まれている。

・コロナパンデミックを乗り越えて、これからはもっと経験を積みたい、旅に出たいという人々のニーズが高まってくる。旅行やレジャーが伸びるとみている。

・シュワルツマン氏は、自分のライフストーリーを振り返って、ものごとのパターンをみつけることが得意であると語った。意味のないデータからパターンを見出し、トレンドを見出す。そして早めに乗る。実際、1990年~92年の不動産危機で、初めて不動産投資を本格化させた。今や世界最大の不動産企業になっている。

・毎日悩み、毎日学んでいる。過去に大きな失敗もした。流通センターへの投資で大惨事を招いた。原因は、投資のプロセスが十分でなく、冷静な評価ができなかった。以来、失敗しないと決めた。ブラックストーンという社名は、トゥームストーンの墓石に対して、黒は死を意味するので、その戒めを社名とした。

・日本は興味深いマーケットで、これからも不動産の分野で投資を拡大するという。不動産では、PEを活用したホテル、オフィス、倉庫などへの投資を継続する。個人投資家向けの商品を広げることも実践していく。

・アントレプレナーによるイノベーションは、米国、中国、インドで起きている。スタートアップには経験が必要である、若い人は自信があってもスキルがない。チャンスを見つけても、いきなりプロから投資を受けるなと警鐘を鳴らす。

・まずは、自ら実験してみる。プロダクトが売れるか。投資に乗ってくる人はいるか。そのニーズをしっかり掴むことが重要である。すべてが思い通りにはいかない。失敗すると感情的になって、精神的な落ち着きを失いがちである。しかし、大事なことは、失敗への準備も怠らず、そこから学ぶことである。

・失敗しても、そこから学んで、他人と違うことをやり続けることである。こう語った。とかく地政学的リスクなど大きな変化に直面すると、通説に惑わされがちである。一方で、経営者は絶えずメガトレンドを見据えながら、他者と違った手を打っていく。ここにイノベーションがある。

・こうしたイノベーションの連鎖がサステナビリティをリードする。それを支える仕組みがESGなので、ESGが先にありきではない点にくれぐれも留意したい。

 

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