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ソニーのESG経営~責任と貢献の一体化

   2021.11.15 (月) 1:38 PM

・ソニーは9年前のどん底からみごとに復活し、今や新しい成長軌道に入っている。ソニーのESG経営はどのレベルにあるのか。興味深い論点をいくつか取り上げてみたい。

・9月にソニーのESG説明会(吉田社長、神戸専務)と、十時副社長(CFO)の講演(日本CFO協会)を視聴した。十時CFOはソニーの進化について、3つの点を強調した。

・第1は、復活の過程において、事業再編を進めてきた。止血→収益重視→リカーリング強化→持続的高収益へと、3度の3カ年計画で大きな成果を上げた。

・現在売上高9兆円、営業利益9700億円であるが、このうちエンタメ(ゲーム、音楽、映画)が利益の58%、エレキが同13%、ファイナンス(金融)が16%、センサー13%という内訳である。

・ある意味でのコングロマリットであるが、セグメント毎のEV/EBIDA倍率は違っている。この評価でみると、ソニーの企業価値は、アナリストコンセンサスの20兆円に対して、時価総額は15兆円であり、このギャップがディスカウントされている。

・テレビやスマホは縮小し、ハイエンドにシフトした。プレステはサブスク型へのシフトを進めようとしている。CMOSセンサーは世界№1である。

・第3次3カ年計画(2018~2020年)では、2.8兆円のキャピタルアロケーションを実行した。M&Aなどの戦略投資に1.4兆円、設備投資に1.2兆円、配当に0.2兆円であった。

・第2に、次の進化はどのようなものになるのか。ソニーのESGを踏まえた価値創出はどのように展開するのか。3カ年計画の第1次は時価総額が1.3兆円から3.7兆円、第2次は、3.7兆円が6.5兆円へ、第3次は6.5兆円が14.6兆円になった。第4次はさらに2倍になるだろうか。

・ソニーのパーパスは、クリエイティブとテクノロジーで感動を生み出すことにある。4月にソニーグループに社名を変更し、6つの事業が自立的にフラットに並ぶようにした。

・価値創出は、1)感動体験(コンテンツ、場の提供、ネットワークサービス)、2)夢の実現(クリエイターの夢)、3)安全、健康、安心(センサー、イメージセンシング、インシュアランス)を追求することで生み出す。

・第4次の3カ年計画では、キャピタルアロケーション3.8兆円、EBRIDA 4.3兆円とした。KPIは営業キャッシュフローからEBITDAに変えて、投資のリターンを見やすくした。

・十時CFOは、1)これまでの構造改革はタフであったが、やることははっきりしていた。2)しかし、次の成長戦略は選択肢がいろいろあるので、エキサイティングであるが、意見が分かれている。

・3)復活の原動力は、①平井前社長がエレキ出身ではなく、経営チームが多様でチームワークがよかったこと、②吉田社長(前CFO)は、財務に詳しく論理的であること、③ゲームなどのネットワークが成長するなどの運もあった、と強調した。

・第3に、今後の課題として、1)コングロマリット、2)3カ年計画、3)ESG経営をあげた。事業ポートフォリオのあり方については、コングロマリットか分割かではなく、多様性とシナジーが成長のアップサイドが作れるかどうかにかかっている。今後発展するなら、事業の分割もありうるという。

・3カ年計画は、経営環境が変化する中で通用するのか。前提としたシナリオが変化してしまうかもしれない。なぜ3カ年かは悩むところであると話した。中長期の高い目標は必要であるが、3カ年の目標が数字合わせになっては意味がないと強調する。

・ガバナンスという点でみると、ソニーグループの取締役会は、①資源配分と②優先順位を決めていく。6つの事業セグメントで各社は自立的に事業を展開する。その時、EBIDAの方が分かり易い。

・「Wise Pivot」をいかに進めるか。赤字に陥ってから改革を進めるのでは、コストがかかりすぎて、事業転換のピボットもできない。事業があと数年でピークを迎えるという時に、追いつめられる前に、手を打っていく。このピボット経営を欧米の先進企業は苦もなく実行している。ここが挑戦のしどころであると強調した。

・ESG経営において、Gに続くEにおいては、環境負荷をゼロにする取り組みを企業の責任として追及する。プラスチックを減らす新しいパッケージや再生プラスチック、そして、クラウドのデータを減らすことが省電力になるので、エッジ型のAIセンサー(IMX500)に注力している。

・事業を通した価値創造でサステナブル社会に貢献するとともに、社会的価値優先の活動も行っている。グローバル ソニー ジャスティスファンド(1億ドル)では、人種差別問題など社会正義をサポートする団体への支援を行っている。

・また、新型コロナ・ソニーグローバル支援ファンド(1億ドル)では、クリエイターへの創作活動や子供たちへの教育支援などへのサポートを行っている。

・環境関連への投資は、単なるコストではなく、その貢献を通して企業価値に結び付けていく。インテリジェントビジョンセンサー(IMX500)は、クラウドからエッジ型へシフトすることで、消費電力が7400分の1になる。

・1億ドルのファンドは、ここからは直接的なリターンを求めているわけではなく、コミュニティとの共存のために活動しており、そのコミュニティにおけるソニーの存在を意義付けている。

・6つの事業において、EとSも事業計画に入れて、サステナビリティとしての業績評価に結び付けている。ESGを組み込んだ経営の一体化は、この3年実行してきて、各事業部門も自分ごととして定着しつつある、と神戸専務は強調した。

・ソニーのESG経営を土台にした成長戦略は、今後とも進化していこう。3年で2倍の価値向上に大いに期待したい。

 

 

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