次世代を担う資産運用立国に向けて
2026.07.07 (火) 10:34 AM
・新NISAには4人に1人が加入している。若者の意識も高まりつつある。資産運用会社を育成しようという動きも活発である。EMP(エマージング・マネージャー・プログラム)では、規制緩和のもと、運用に特化してFM(ファンドマネージャー)としての能力を発揮できるようにしようとしている。
・上場企業はどうか。ROE、PBRの伸び代はまだありそうである。今年のコーポレートガバナンス(CG)コードの改定では、もっと成長投資に舵を切れと、叱咤激励されている。
・ROEを上げてもPERが下がっては身も蓋もない。株主還元も大事であるが、成長機会を見出し、積極的に投資することが求められる。そんなにうまい投資機会があるはずはない、という経営者は交替した方がよいかもしれない。投資機会は探すのではなく、創り出すのである。その能力が問われている。
・価値創造ストーリーを作り、それをIRで訴えていく。IRも通り一遍では伝わらない。経営トップ、取締役会、IR部門で、わが社の戦略が練られているか。株主、ステークホルダーとの双方向の対話で、その肉付けがなされているか。安易なM&Aに走っていないか。短期的な株主還元に陥っていないか。将来が見通せない中で、リスク回避だけに捉われていないか。
・実際、地政学的リスクは高まっている。エネルギーや希少原材料のサプライチェーン、経済安全保障からみた民需・軍需のハイブリッドな提供体制など、先端テクノロジーのイノベーションの追求では、資源配分のあり方が問われている。コスト優先から価値優先へ、仕組みを見直し、新たなサステナビリティ(持続可能性)を確立してほしい。
・CG(コーポレートガバナンス)としては、1)経営トップが方針を定め、2)取締役会でしっかり議論し、3)基本戦略を開示していくことが求められる。投資家は議論のプロセスを知りたい。その上で定められた戦略を納得したい。そうでなければ、実行戦略が腹落ちしないので、リスクに対する不安が高まってしまう。それでは投資が継続できない。
・社外取締役は、攻めのガバナンスで本来の役割を果たしているか。監督と助言という役割の中で、執行サイドの応援団になっていないか。あるいは、自らよく理解できないからといって、リスクに対して過剰に回避的になっていないか。
・社外取締役は、執行サイドへの助言が第一義的な役割ではない。もっと案件を深く理解し、現場に行ってリスクの把握することが求められる。リスクへの理解が深まれば、本来のリスクマネジメントにおける判断にも深みが出てこよう。
・想定外を想定しつつ、あいまいなままにしないことである。状況は刻一刻と変わる。変化に振り回されることなく、変化を踏まえて、執行サイドの打つ手を監督していく。もし、それが難しくてできないと感じるようでは、社外取締役として不適任と考えた方がよい。
・企業のCGコードに対して、機関投資家のSS(スチュワードシップ)コードはどのように対応してきたのか。投資先企業と建設的な対話をせよ、と求められた。対話を通して持続的成長を促すことが、投資家としての中長期リターンに結び付くという論理である。
・1)対話を通して、企業を深く理解した上で、投資判断に役立てよ、2)投資に値しないとすれば、どこに問題があるのか、3)それを議論した上で、不十分なならば議決権の行使において、反対票を投じる、4)株主総会で別の意見を表明し、動議を出すことによって、論点を一段とつまびらかにすることができる。
・資本効率では、ROEの向上、持ち合いの解消、自社株買い拡大などが論点となった。ESGの項目では、独立社外取締役の拡大、経営陣の多様性、TCFDへの対応、人権や働き方改革、人的資本への投資がテーマとなった。SSコードでは、こうした論点について、しっかり対話し、企業に改革を求めることを推奨してきた。
・CGコード、SSコードの実践を通して、資産運用立国としての一定の成果を上げている。この点は高く評価できる。しかし、まだ道半ばであろう。いくつかの視点があろう。
・企業サイドからみても、運用サイドからみても、ハードルを一段と上げていく必要がある。改革の成果によって、平均的なレベルが上がってきた。しかし、トップクラスに比べた時の格差は拡がっているのか、縮まっているのか。個々の企業の状況をよく見ていきたい。
・企業サイドでみると、企業価値創造において、付加価値創出力はまだ不十分である。運用サイドでみると、自らの運用能力が十分な成果に結び付いているのか。運用機関のパフォーマンスを上げるべく、もっと切磋琢磨してほしい。
・海外との比較においてはどうか。日本の国際競争力はこの30年間低下してきた。良さも十分有しているが、もっと実力を発揮できるはずである。日本企業はさらに成長機会に投資をして飛躍してほしい。運用機関はポートフォリオを充実させて、年金基金、投資信託を通して、中長期の高パフォーマンスを実現してほしい。
・資産運用立国として、個人金融資産のポートフォリオが大きく変容していこう。まだ始まったばかりである。2050年に向けて、次世代を担う企業家、投資家に大いに活躍していただきたい。
