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リーダーシップの変質

   2026.06.02 (火) 6:14 AM

・永守さんから聞いた。稲盛さんがどなっているところを見たという。誰でも感情が先に出てしまうことはある。感情を一切顔に出さない人がいたら、それはそれで結構怖い。一流の経営者には何を求めるか。体験的に考えてみよう。

・創業経営者がいる。A社を起業して、事業を大きくする途中で何度も挫折しそうになった。しかし、何とか乗り切り、上場企業に育てた。時価総額1兆円を目指しているが、自分の代では届かないかもしれない。

・次を誰に託すのか。自らの才覚からみると、一緒に歩んでいきた経営陣は部下ならばよいが、後継者にするかというと粗ばかりが目につく。一度目につくと、その後は鼻につく。そして、気に入らなくなり、退任させてしまう。

・それなりに有能な人材を切ってしまうので、人材不足となる。それでも、頑張ろうとするから、ますますワンマンになって、まわりには小粒の経営陣しかいなくなる。彼らは、ワンマン社長の思い付きを実行しようとするから、部下に辛く当たる。組織の活力が失われていくが、社長の目が黒いうちは何とか持つ。

・しかし、10年単位でみると、時代はどんどん変わっていく。社長も創業して30年。60歳を超えてくると勘も鈍ってくる。本人も何かを感じているが、それを受け入れることができない。後継者を誰にするか。30代の息子に継がせたいが、まだ経験不足である。さて、どうするか。

・ニデックは時価総額10兆円を目指したが、つまずいた。目先の業績主義に捉われて、忖度した経営が粉飾決算にまで追い込まれた。創業者のリーダーシップによるワンマン経営が、暴君経営にまで成り下がったといえよう。

・外からはどうみえたか。いつまでも中小企業のオーナーの域を出なかった。トイレ掃除をさせてみれば、若い人材の素質はわかる。確かに実感であったろう。決算説明会で、そんな質問をするから、君はトップクラスのアナリストになれないと言って、質問に文句をつけた。

・役員会では、事業部門の業績ランキングによって、今月の席順を決めているといって、業績重視を強調した。必達、さもなければ退場、これでは必達のために何でもやれ、というのに等しい。そのプレッシャーに負けてしまった。

・ユニクロの柳井さんは、あるべき効率を徹底的に追求する。企業の成長段階によって、経営陣はどんどん入れ替えていく。任せながら、全体は強烈にリードしていく。まだ小さい企業の時に成長に向けてシステムを一新しようとした。

・これが当時とすると無理な要求にみえた。ユニクロはこれから大きくなる成長するのだから、新しいシステム開発に先進的についていくべきだという意見に対して、そのシステム開発会社は無理難題にはついていけない。成長企業は他にもあるということで、取引をやめた。

・ユニクロは困った。別の会社と新システムの開発に取り組んだ。ユニクロは伸びていった。後に、そのシステム会社の役員は、とんでもない赤字プロジェクトになって大変であったと語った。その会社とは、当時のソフトバンクである。

・柳井さんは長らくソフトバンクの社外取締役を務めた。ソフトバンクの孫さんは大胆な投資を実行する。時に無謀と思われる投資を決断し、それがマーケットで不安視されても全く意に介さない。なぜか。

・自らの決断に自信を持っている。投資判断を間違うこともある。それはそれとして、ポートフォリオの中で処理され、トータルのパフォーマンスは確保していく。株価はボラタイルである。孫さんの経営判断を信頼する投資家は大きく増えてきたが。かつては、相当理解されなかった。

・30年前のアナリストは、ソフトバンクを担当したくなかった。孫さんの意思決定についていけない。よって、レポートが上手く書けない。とにかくリスキーだという指摘にとまどってしまう。

・でも、孫さんは、そんなアナリストを怒ることはなかった。常にわかってもらおうとしていた。PCを語り、インターネットを語り、今やAIに全力投入している。世の中のブームになる前の5~10年先を走っている。

・柳井さんは、ソフトバンクの社外取締役を辞める時、株主総会で語った。孫さんには気を付けろと。柳井さんは取締役会で何度も孫さんの意思決定に反対していたらしい。それでも、2人は長らく信頼し合っていた。

・孫さん、柳井さん、永守さんの3人に共通していることは、一代で会社をグローバル企業に育ててきたが、後継者をどうするかという点で、まだマーケットの信任を得られていない。永守さんは、その前に躓いてしまった。後継者を選びながら、任せられなかった。すぐに不満になって、解任してしまった。これを見て、永守さんは老害の域に入ったと判断した。

・孫さんと柳井さんはどうするのか。昔流でいえば、番頭に任せるのか。今流にいえば、プロの経営者に任せるのか。サクセッションプランがしっかり実行できるだけのガバナンスがカルチャーとして出来上がっているのか。

・創業者と同じ能力の人はいない。それでも、2代目が創業者を上回った例はある。一緒に走ってきた番頭を次のトップとして、創業カルチャーを維持しながら、企業を脱皮させた例もある。有能なファミリーにつなぐ場合は、とりわけこの仕組みが大事である。

・孫さんは、1000本ノックで経営判断を磨いてきた。意思決定に当たって、あらゆる場合を想定して、その良し悪しを判断していく。最近は、誰よりも早く、先端のAIを使って、この1000本ノックを実践している。よく考えてあるから、外から見ると無謀と思われる投資であっても、本人にとっては熟慮断行で、自信を持っている、このようにみえる。

・では、冒頭のA社の社外取締役は、どのように行動すればよいのか。1)創業社長の信頼は得られているか。社長に耳の痛いことを言っても、聞いてもらえるか。聞く耳を全くなくしているようであれば、社外取締役の任は果たせない。

・2)後継者にファミリーをつけたいのであれば、それを支える仕組みを作っていく必要がある。ファミリーを自分の思うように動かしたいというだけでは、移行期がうまく機能しない。この時どうするか。

・3)思い通りに動かない役員、社長の意向とは違う方式で成果を上げている役員を気に入らないといって、排除するようでは、次世代の人材は育ってこない。これらのケースにおいて、社外取締役はその役割を果たすことができないであろう。

・永守さんは、どうすればよかったのか。粉飾決算を作れとは命じなかったであろう。自分と同じような有能な人材いないと分かったであろう。永守さんへ気付きを示唆する人はいなかったのか。いなかったとすれば、人徳のなせるわざであろう。天は二物を与えず。他山の石としたい。

・永守さんのいるニデックへは投資しなかった。永守さんはユニークではあるが、その言動から見て尊敬できなかったからである。

・A社のような上場会社は数多くあろう。ガバナンス改革に魂が入っている会社にこそ投資したい。

 

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